河海抄

『河海抄』(かかいしょう)は、室町時代初期(1362年頃)に成立した源氏物語の注釈書。
四辻善成(よつつじ よしなり)著、全20巻20冊です。
(10冊本や15冊本もあり)

成立

もともとは貞治年間(1362年から1367年まで)の初め頃に、足利義詮(室町幕府第二代将軍)の命令によって作成されたもので、現在、写本などの形で見られる「河海抄」はその後も四辻善成が長年に渡って考察を書き加えていったものと考えられています。
また四辻善成は、後年に本書の秘説32項目を別冊化した『珊瑚秘抄』も作成しています。

内容

宮中での『源氏物語』の講義の内容をまとめたものとされています。
物語の由来や時代考証、名称解説、歌道との関係等々から、作者の紫式部についてまで幅広く述べられています。

『源氏物語』には、先に『奥入』『紫明抄』などの注釈書が存在していましたが、『河海抄』ではそれらの内容や現在では失われてしまった資料等も含めて引用されており、全体を通して本書以前の考証に詳しく触れているため、古注の集大成的な性格を持っています。

重要度

源氏物語の注釈書としては、『河海抄』以前には、
・河内方により作られた注釈書 … 『水原抄』、『紫明抄』、『原中最秘抄』
(河内方とは当時の文化の中心地といえる京都から離れた鎌倉を中心に活動していた一派・一族)
・特に理解が困難な点について写本に書き付けられた添書を抜き出してまとめた注釈書 … 『源氏釈』、『奥入』
・解釈が分かれる点についてのみ議論形態で書かれた書 …『弘安源氏論議』
といったものしかなく、初めて作られた本格的な源氏物語の注釈書といえます。

本書以前の注釈書の集大成的に位置付けられるとともに、本書以後の源氏物語の注釈の基礎を築いたといえるものであり、源氏物語の注釈書の歴史においては本書までの注釈書を「古注」、本書以後の注釈書を「旧注」と呼んで区分されています。

全体として河内方の影響が大きく、使用している本文も基本的に河内本であり、部分的に青表紙本や伊行本や従一位麗子本等の現在別本とされている諸本との比較が見られます。

内容は、事実に基づくというよりも中世的な伝承に彩られた説明を付け加えていることもありますが、それをおいても参考になる点が多いので、国学者の本居宣長は「源氏物語 玉の小櫛」の中でこの河海抄を「源氏物語の注釈の第一」としています。

写本

『河海抄』の写本は大きく中書本系統と覆勘本系統に分かれます。
主な写本として天理図書館本、静嘉堂文庫本、神宮文庫本などがあります。

参考サイト:wikipedia 河海抄

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