今回は、「嵯峩螺鈿・野村」のご主人 野村 守さんに「螺鈿の魅力」と題してお話しを伺いました。
- 普段なかなか知ることができない螺鈿のお話に、みなさん興味津々でした。
- こんなにボコボコした貝を削って平らな面を出して螺鈿に使える素材を作ります。
- 丸い貝からこの平らで薄い部分が作られるなんて、日本の技術は凄いです。
- こちらが焼いた貝。 確かに色が違います。
- 貝の段階でもキレイ! けれど、実際はこの表面部分は使われないのです。
- 螺鈿体験の様子。 削る音で出来不出来がわかるなんて、さすがです。
- じっと見入ってしまうほど奥深い色合い。 数十万と言われていましたが、講義後、購入者が現れたとか。
概略
創業百年余り、京都では唯一の螺鈿製造と販売そして体験教室を営んでおられます。
野村さんは螺鈿の伝統工芸士として、様々な方を対象に講演して螺鈿の魅力を伝えていらっしゃいます。
講義前
今回は、いつもより1時間遅い、11時30分からのスタートでした。
そして、13時には終了とのことで、ちょっと慌ただしいながらも、内容の濃い1時間半でした。
螺鈿て何?
みなさんは「螺鈿」ってすぐに読めますか?
「らでん」と読めない人が結構いるみたいです。
中には「つくだに」と間違えて「佃煮屋ですか?」と暖簾をくぐる観光客もいるそうです。
ちなみに、「さがらでん」というのはてっきり「嵯峨螺鈿」かと思っていたのですが、「嵯峩螺鈿」が正解のようです。
後日、サイトを見て気づきました。
それから、螺鈿を材料名、商品名と間違える人が多いそうですが、もともとは仕事の名前、職人の呼び名であり、本来は「青貝」と呼ばれていたそうです。
厚みの差で「螺鈿」と「青貝」を使い分けることもあったそうですが、今では何でも「螺鈿」と呼ばれるようになっているとのこと。
今はそれが一般的なので、以下の文でも職人名ではなく商品名として「螺鈿」を使っていきます。
螺鈿の歴史
正倉院にある「螺鈿の琵琶」。
この時代は、貝の厚みを薄くする技術がまだない頃で、蒔絵との併用はされていたものの、螺鈿は分厚いままで使っていたそうです。
中国でもすごく分厚い貝を使って作っていたが、明の時代くらいから薄くなっていったそうです。
鎌倉時代になっていくと、日本でも「うすがい」と呼ばれる薄い貝を使えるようになっていきます。
貝の加工技術
螺鈿の材料となる貝には夜光貝(やこうがい)、蝶貝(ちょうがい)、あわびなどがあります。
単なる貝を螺鈿細工に使えるように加工するために、様々な技術が発展していきました。
薄くする方法
砥石で研磨していきます。
この時、貝の両面を削ります。
だから、表面がきれいといって良いものがとれるとは限らないそうです。
そして、1つの貝に対して螺鈿に使える部分が1枚しかとれないのかというとそうではないそうで、全く同じ文様の螺鈿が出てくることがあるので、複数枚に分ける技術があるのかもしれないとのことでした。
この過程に関しては、摺貝屋さんという職業が別にあり、その店から最低500枚などという単位で購入しているので、詳細は不明とのことでした。
うーん、奥が深い!
厚い方が高い
では、薄くする技術が難しいので、螺鈿が薄いほど高価なのか?というと、決してそうではなく、むしろ厚いほうが高価なんだとか。
なぜかというと、厚みがあって螺鈿細工に使用できるほどに平らな部分があるということは、元が相当大きくて上質な貝である必要があるから、結果的に高価になるのだそうです。
ちなみに、大きくて薄いの(2枚になっているもの)などは、見たことがないとおっしゃっていました。
使える貝が減っている
現在の螺鈿細工用の貝の主な原産地はメキシコ。
ただ、1kgくらいの大きさの貝がどんどん減っているそうです。
様々な螺鈿の技法
さきほどの、貝の両面を摺ることでつくられる摺貝と呼ばれる螺鈿の技法の他に、「焚貝(焚き貝、たきがい)」という技法もあるそうです。
これは、夜光貝を1週間から10日ほど焚き続けることによって、貝が雲母状に裂けるようになる技法。
普通の摺貝でできた螺鈿とは光沢が全然違うそうです。
それから、貝を細かくして樹脂を入れて、細い短冊状にすることで、貝と樹脂との境目をわからなくさせて利用するという技法もあるそうです。
これは、主に着物の帯などに使われています。
野村さんのような漆工芸の世界では、樹脂部分が浮いてしまうため、そういった樹脂入りの螺鈿を使うことはほとんどないそうです。
螺鈿の加工方法
いろいろな技法を駆使してできあがった螺鈿を、実際に使う時の加工は、
厚い螺鈿の場合は、糸鋸
薄い螺鈿の場合は、先端に針のささった手作りの道具
などで行われます。
針にはこだわりがあって、みすや針を使っているとのこと。
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漆細工の方法
漆を塗ったり乾かしたりする工程では、25度で湿度70%がベストなのですが、1年中その状態を保つのは困難なので、できるかぎりのことで対処するそうです。
エアコンをつけると、うるしがボケる、とのこと。
なるべく自然の状態で乾燥させるように心がけているそうです。
塗る
漆をかけるのは女の人の髪の毛で作った筆、なんだそう。
それも、ストレートヘアでパーマをかけたことがない髪が良く、中でも海女さんの髪が一番適しているという話でした。
いろんな道具があるものです。
研ぐ
漆で真っ黒にしたあと、研ぎだします。
研ぐものは炭。
漆を研ぐ専用の炭(研炭、とぎすみ)というものがあり、駿河炭(するがすみ)という炭を使っているそうです。
素材はアブラギリで、山奥に行かないと生えてない素材なのと、後継者が育たないとのことで、今では日本で1軒か2軒しか作ってないそうです。
それゆえ凄く高価なもの。
野村さんの工房では、くず炭をミカン箱1杯でいくら、のような買い方をしているそうです。
螺鈿切り体験
前の方には螺鈿細工や材料などがならんでいました。
講演の最後のほうでは、螺鈿を細工する体験などもさせていただきました。
さすが職人さん、切っている音できちんと切れているかがわかるというのが印象的でした。
講演後
今回は、時間がないとのことで、13時には道具類が片付いてしまうということで、みなさん螺鈿細工に見入っておられました。
本当かわかりませんが、その場で螺鈿の香合を購入されている方もいらしたようで、確かに素晴らしく綺麗な工芸品でした。
今回の食事、茶席
今回は、久しぶりに洋風なお弁当。
ナポリタンや卵焼きなど、子供向けな品が多かったので、5歳の娘が喜んで食べていました。
ただ、朝が早かった(日曜の5時に起き、新幹線で来た)ため、食べ終わったらぐずりだしてしまい、残念ながら茶席には伺えませんでした。
今回は、珍しく一人で静かに遊んでいてくれたおかげで夫婦ともゆっくり講義に集中することができました。
螺鈿工芸作りに必要なその他の職業
・摺貝屋 … 希少
螺鈿の仕入れ
・針屋
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螺鈿を加工する道具
・炭屋(駿河炭屋)… 希少
漆を研ぐ道具


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